NANO UNIVERSE 25th ANNIVERSARY
SPECIAL INTERVIEW
S.A.R.
初アルバムのリリースや
初ワンマンライブの
その先に…
まさに満を持してというべきか。彼らが音楽活動を本格始動し、さあこれからという時に立ちはだかったのは世界的パンデミックだった。それでも彼らは楽曲作りに勤しみながら独自にPVも制作。気鋭クリエイターたちとの邂逅も果たしながら今の自分たちにできる表現法を模索してきた。そして今年、第一弾アルバムをリリース。初のワンマンライブも行った。それから約半年。彼らの中に去来する想いとは。
Eno 「アルバムを出した、ワンマンをやったとかで何かが大きく変わることは基本的にはありません。ただ、自分が元から持っていた音楽をやる動機や意味も含め、曖昧だったものが現実味を帯びてきた実感はあります。いろいろなものが明確になったというか、解像度が上がったという感覚は出てきたかもしれないですね。」
Imu Sam 「自分たちだったり自分自身がどういう人間なんだろう、どんなものなんだろうみたいなことはちょっとずつ考えるようになったかもしれません。これまでは意識せずただ音にノるだけでしたけど、見てくれている、聴いてくれている実感を得ることでリスナーとの関係性まで掘り下げてみたいと思うようになりました。」
Attie 「活動をし始めて『さあ頑張ろう』って時にコロナの影響からライブができませんでした。実際、その頃は音源を世に出しても聴いてくれている人がいるのかいまいち掴みづらかった。なので『聴いてくれている人がいる』という実感は大事だなと今は改めて感じています。」
may_chang 「自分はそんなに変わった感はないし変えようとも思ってはいませんが、強いていうならより周りに感謝はするようになりましたかね。たまたまそういう時期だったのかもしれませんけど。」
あらゆる経験がクリエイションになんらかの影響を及ぼすことはままあり、大半はポジティブな方に転がる。S.A.R.の場合はどうなのか。
Eno 「人生経験が作品に反映されるというのは当然のこと。それがどうクリエイションに結びついたのか、具体的に分からなくても潜在レベルで反映されているはずです。常にそういうものだと思いますし、あとは時代性というか、ファッションもそうだと思いますがトレンドは音楽にもある。時代と作品の関係性はいつの年代も変わらないような気がします。」
ナノ・ユニバースの服と
それぞれの服と
そして今回、ナノ・ユニバースの25周年記念イベントへも出演。ステージ衣装として同社のアイテムに袖を通した。その感想について話を向けると、概ね好印象を抱いたよう。
Imu Sam 「着心地がすごくよかったです。『スル~ッ』っと肌を滑るみたいな。前からナノ・ユニバースはオシャレなショップという漠然としたイメージしかありませんでしたが、単にオシャレなだけじゃないんだって思いましたね。普段、ニットやスラックスは滅多に着ないんですけどなんかいいなって(笑)。」
Attie 「たしかにあんまり見たことないね。」
Imu Sam 「そうそう。だいたいもらいモノを永遠着続けて、稀に買っての繰り返し。大半は武骨というか、ラフなアイテムが多いし、今日はちょっとラグジュアリーな気分に浸れた(笑)。」
may_chang 「僕はせっかく組んでいただいたのにいろいろ変更しちゃってすいません(笑)。いつも通りの自分に近い感じにしたかったので。ロンTなんて最たる例で、そんなに数はないですが結構好き。ただ、普段は古着がメインなので、いつもと同じではありますが何だか綺麗に見えるなって。」
Taro 「自分が着たのはジーンズのセットアップ。自分の中でセットアップは、ちょうどいいサイズ感がなかなか掴みづらくて着こなすのが難しい印象。身長もそんなに高くないですし。ただ、普段からわりとピッタリとした黒デニムを履くので、比較的親近感のある素材が功を奏した感じがします。あと、僕もオーバーオールなどわりと着る服は古着が多いですし、友達からもらったものも多いのでちょっと新鮮でしたね。」
Attie 「僕はわりと普段からなんでも着る方ですが、用意してもらったのがレザーパンツだったのでちょっと驚きました。穿いたことがなかったので。経験したことのないアイテムってなかなか手を出しづらいじゃないですか。ただ、すごく穿きやすくて、トップスを適当に選んだとしても全体的にサマになる感じがしました。新たな発見ができた気分ですね。」
Eno 「個人的には、ナノ・ユニバースさんの服は着ている人そのものにフォーカスがいく服だなって感じます。なんでその人がそれを着ているんだろうっていうところにすぐ頭がいくような服。それってデザイナーさんも狙っているところではあると思うんですよね。デザインをするうえでどうしてもデザイナーのエゴは出やすい。もちろん、そういうのがないと作れないと思いますが、それだけじゃなくて、これを着るとその人の“ナリ”が見えるというか、その人の嗜好性が滲み出るというか。結構そこらへんってファッションの本質なような気がします。」
santa 「自分は普段着ている服装に色合いがちょっと近くて接しやすい印象がありました。いつも着る服とは違う雰囲気で楽しめました。大概はナイキのウィンドブレーカーとかをよく着ているので。」
Attie 「ライブとかで着てるやつ?」
santa 「そうそう。母親が着て、その後兄貴が着て、今や20年ぐらいは経っていると思うけどまだまだ全然着られる。結構、普段から機動性とか動きやすい格好が好きなので気に入って着ていますね。」
Attie 「僕は中学の時に親父に買ってもらったジーンズは今もたまに穿いたりしますかね。親父に買ってもらったっていうのもあるし、自分に合ったサイズ感や色落ちに仕上がっているのもあって結構思い入れはあります。」
Taro 「自分もなんだかんだ長く着られて、色褪せた姿も楽しめるモノがわりと多い。とはいえ、最近は毛嫌いをやめようと思っていて。これは着ないだろうなとか思っていても、今後着たいと思う時がくるかもしれないですから。今は決めつけや先入観は持たないようにはしています。なので、いろんなアイテムにチャレンジしたいですね。」
may_chang 「僕は古着が好きで、特にヴィンテージのTシャツは結構集めていますね。そんなに高いのは持っていませんが、映画やアートといったサブカル的な要素が入ったものが多いですね。」
Imu Sam 「基本的には長く着ようと思ってみんな着るんですけど、わりと実用的なもの。ポケットがいっぱい付いているとか、ものがたくさん入るとか。いつでも着られてなんにでも合わせられるものがいいですね。」
バンドとしての今後、
そして25年後の自分…
ファッションにおいて各々明確なスタンスがあるが、それは音楽も同様。それぞれが重なり合うことで、他にはない独自の音が生まれ多くの人を唸らせる。ナノ・ユニバースもまた、国内外を問わずあらゆる要素をコレクションに反映させてきたことで多彩な商品展開やプロダクトを生み出してきた。そして、気づけば今年で25周年の節目を迎える。その「25」になぞらえ、彼らに今後のこと、そして自分たちの25年後をイメージしてもらった。終始困惑しながらも口をついて出た言葉がまた面白い。
Imu Sam 「25年後か…難しいな。」
Attie 「バンド活動は自分のやりたいことのひとつなのは間違いない。ただ、将来こういうことを仕事にしたいみたいなのはそこまで自分はなくて。その時々で自分のやりたいことを表現できたら幸せだなって思うタイプです。なので、気になったことは手当たり次第やれる環境が今は欲しかったりしますね。たしか、24歳の時だったと思いますけど、自分の幸せとは何かをずっと考えていた時期があって。好きなことはやっぱりいろいろあるじゃないですか。美味しいものを食べるとか遊ぶとかゲームするとか。でもそれって、それをしてないから幸せじゃないとは言えないなって。そこで、自分の幸せをもっと持続可能なものに定義しようと思ったんですよ。」
Eno 「サステナブル(笑)」
Attie 「そう(笑)。その時自分がやりたくないことをやっている時間ってやっぱり有意義に感じられないですよね。なので、常に自分がやりたいことをやるためにはどうすればいいのかを考えて生きていく。そうすると、嫌なことも幸せになるための一個の足がかりにすぎないと思えてくる。それが25年後も続いていればいいかなって。」
santa 「自分はジャケのデザインをやってくれているFUKAYAという人間がいるんですけど、彼とよく話すのがアニメーションとかやれたら面白そうだよねということ。格好いい映画のサントラもいいですね。音楽だけじゃなく、ファッションも含めそういう垣根を越えた活動はしたいです。ただ、25年後となると…分からないですけど、家族とかができて、音楽もその時できてれば幸せかなって。それで週末に車とかバイクとかいじれるような未来が来ればいいかなって思っています。」
Eno 「その時アニメは作り終わってる?」
santa 「終わってるね(笑)。」
Imu Sam 「まあ、楽しく音楽を25年後もできていたらいいなっていうのはありますね。もうどでかいステージで、ドカン、ドカン、バーン!みたいな(笑)。それで自分たちの音がシーンに広がっていければなとは思います。」
may_chang 「僕はあまり先のことは考えないタイプなので難しいんですけど、いろんな人といろんな収録をやってみたいのはある。さっき言っていた映画もそうですしCMもそう。同世代の人たちとジャムっても面白い。それで、友達とか家族を大切に想いながらもうちょっと落ち着いた考え方をしていたいと思います。」
Eno  「結局世の中は、環境がアップデイトされそれに社会がついていく動きをずっとしているだけですよね。自分がどうとかではなく、世間がどうなるかによって価値観も含め全部変わる。それが単純に楽しみですね。それっておそらく科学の進歩だとかいろいろことによって総合的に変わるし、好きな音楽も変わるし、作る曲も変わるしそこに興味がありますね。」
Taro 「自分はそこまで深く考える方ではないですが、活動のステージが上がっていっても気持ち的には満足したくはないですかね。満足してしまったらもうそこで終わりですし。なので、25年後もやっぱりドカン、ドカン、バーン! とはしていたいですね(笑)。」
S.A.R.
( エスエーアール )
santa (Vo)、Attie (Gt)、Imu Sam (Gt / MC)、Eno (Ba)、may_chang (Dr)、Taro (key)の6名で構成。ルーツの異なる個性の調和により生み出される音楽は、ジャズ、ファンク、ソウル、HIPHOP、R&B……とひとつのジャンルでは括れない多様性に富む。その音楽性は着実に目の肥えた識者やクリエイターたちを侵食。徐々にラジオやテレビ、WEBメディアなどで取り上げられ、今年の3月、満を持して1stアルバム『Verse of the Kool』をリリース。翌月には初のワンマンライブを行い大盛況のうちに幕を閉じた。11月3日には1stアルバムのアナログ盤の発売を予定。
Photography : Sotaro Goto
Model : S.A.R. (santa / Attie / Imu Sam / Eno / may_chang / Taro)
Hair & Make-up : Storm
Casting : Masaru “runpe” Kato
Edit : Ryo Kikuchi
Web : Masaki Hori
Direction : Moe Ichiji