NANO UNIVERSE 25th ANNIVERSARY
SPECIAL INTERVIEW
tonun
最初に目指したのは
ギタリスト
tonun
自身の作品を動画投稿サイトから発信したのは2020年秋。以降、配信を続ける中で注目度は指数関数的に高まっていき、初ライブツアーでは全公演がソールドアウト。昨年発表された待望の初アルバムには多くの関心が寄せられた。わずか4年弱の間に起こった大きな変化。ただ、当の本人はいたって自然体である。そんな彼に、まずは音楽に目覚めていく道程から話を聞いた。
tonun 「小学校の5年生ぐらいの時から、自分の中で歌うことの格好良さを漠然と感じていて。ひとり教室で歌ったりもしていました。周りから見たらヤバい奴ですよね(笑)。それに、友達の家でギターを弾いてもらった時にすごく格好良く見えたんですよ。それからギターにものめり込んでいきました。」
ポップス、ロック、ブルース、ソウル、ジャズ、そしてR&B…。無意識に出会っていくあらゆる音楽へ耳を傾けていくうちに、やがて自身の音楽性が明快に輪郭を帯び始めていく。
tonun 「音楽に興味をもってから分け隔てなくいろんな音楽を聴いてきました。小学生のときは親が車で流すJ-POPが主流で、中学に入ると4歳上の兄の影響でバンドというものを知りました。高校では軽音部に入り海外のギターヒーローに憧れながら本格的にギターを学び始めましたね。多くのギタリストをコピーしながら、メタルやファンク、ブルースなどを聞くようになりました。そして、大学生になり聴く音楽を整理していくと『俺、ブラックミュージックが好きなんじゃん』って気づいたんです。それから今の音楽性が形成された感じです。」
ただ、自ら制作した音源を発信したいという欲求は、当初そこまで強くなかったというのだから面白い。
tonun 「早いタイミングから音楽を仕事にしたいとは思っていて、高校生の時にはギタリストが第一選択肢だったんですよ。でも、ギタリストになる方法がいまいち分からなかった。それでギターを習っている時に『アーティストになった方がいいよ』と先生にアドバイスされ、ちょうど歌うのも好きでしたしだったら曲を作ろうと。もちろん最初は苦労しました。ひたすら試行錯誤し、徐々に慣れてきたらある程度カタチになってきた。それで貯めていたものをどんどん発信していきました。」
自身の音作りへの
こだわりに重なる
“ナノ”の服
tonun
彼の曲の作り方は、まず思い描いたテーマのアウトラインをまるで鉛筆でデッサンを描くかのごとく明確にしていくことから始まる。そこへ色をのせていくようにビートをつけるイメージだ。こだわるのは、シンプルな中に潜ませた違和感や隠し味。
tonun 「自分の音源を一度聞けば、シンプルな曲に聞こえるかもしれません。ただ、自分の中でこだわっているところもさりげなくあって。それが伝わるかは分からないですけど、隠し味にはなっているはずです。インパクトがあるかというとそうではないけれど、聞いていたらなにか他とは違う、でも分かる人には分かる、みたいなところは意識していますね。」
そう言葉に熱を込めつつ、そのさりげないこだわりは、今年で25周年を迎えたナノ・ユニバースのアイテムにも感じられると話す
tonun 「ナノ・ユニバースさんの服は、もともとシンプルでキレイめな印象がありました。でも実際に着てみてそれだけじゃないんだなと。一見普通に見えるジャケットでも大きめに作っていたり、シャツの襟も窮屈さを感じさせずかつ端正に見えるように考え抜かれていたり。単にシンプルなだけじゃないと実感しましたね。僕はお気に入りの服屋をひとつ決めたら永遠にそこへ行ってしまう。その方が、嗜好性を分かってもらえているので自分に合ったモノをすぐに提案してもらえますから。でも、他にもいい服がいっぱいあるんだなって改めて思いました。」
地元・広島にいた頃は主に古着を好んで着ていたとtonunさん。そんな彼のワードローブにも合わせやすそうなアイテムが、ナノ・ユニバースにはたくさんあると目尻を下げる。
tonun 「普段はヨーロッパ古着が中心で、シャツやスラックスなどわりとキレイめなアイテムが多い。今回着させていただいたアイテムは、普段着ているアイテムに近いですね。特に、最初に着たベロアのカーディガン。僕もベロアのアイテムは持っていますけど、タートルネックなんです。なので、前開きになったアイテムは素材的には馴染みがありますけどすごく新鮮でしたね。新たな発見でした。」
ほかにも、気になったアイテムを聞くと、矢継ぎ早に挙げてくれた。その様子からも、相性の良さを感じていることがよく分かる。
tonun 「レザージャケットにジーンズを合わせたコーディネートも印象的でした。僕はジーンズを一本だけ持っていますけど普段はあまり穿かないんです。でもこれはとても穿きやすかった。ジャケットもレザー製でアクが強そうに見えますよね。ただ、いざ袖を通してみると意外に合わせやすい。おそらく色が関係しているのかも。黒だとちょっと強すぎますけど、ダークブラウンにより緩和されているような気がします。しかも、フリースのベストにニットとスラックスを合わせたクラシックな着こなしも良かった。個人的には襟が開きすぎず詰まりすぎない、それでいてスタンドカラーっぽいシャツが可愛いなと思いましたね。」
年齢を重ねるごとに
生まれる変化が
あるからこそ

ファッションも
音楽も面白い
tonun
語られる言葉の節々から、洋服への関心の高さが伝わってくる。そして、「最近よく手にするアイテムは?」の問いに対し、彼独自の解釈で答えてくれた。
tonun 「今は家にこんなアイテムがあるからそれに合わせられそうなモノを選びがち。シンプルというか、オールマイティというか、そんなアイテムが多いかもしれません。そして気づいたらワードローブの中が偏っている、なんてことも。ただ、本音を言えば『日頃からよく選ぶアイテムは?』と聞かれるとやや戸惑います。その時々によるというか、やはり時を経るごとに思考も嗜好も変わっていきますから。」
経験や知識、そして時々で感じた感動…。それらを積み重ねていくことで人は感情の多様さや視野の広がりを見る。インプットの内容が変わってくるがゆえに、アウトプットとしての着こなしに変化が生まれるのは、ある種必然と言えるかもしれない。彼はそれを面白さとして捉えている節がある。そして、音楽においても…。
tonun 「理想的な音源が作れるようになったから自分で発信し出したんですけど、それをもっと多くの人に届けたいとなると多くの人の力が必要になってくれる。なので、プロデューサーさんやスタジオミュージシャンの方など、よりクオリティを上げていく作業としていろんな人の力を借りています。ただ、そうするとクオリティは上がるかもしれませんが、関わる人が増えていくので良くも悪くも自分の理想を全員が100%共有しづらいという側面も出てきます。その壁は感じますけど、でもその時にできたものはその時の最高という自負もありますし、いろいろ積み重ねているのが今。だから、作風も2年前と今とじゃ変わっていると思います。洋服みたいにインプットが増えていますから、今はその変化を楽しみたいという想いはあるかもしれません。」
これまで見えてこなかったもの、足りなかったものなどを取り込んでいる作業であるとtonunさんは語る。その作業のひとつがライブ。11月からは弾き語りツアーもスタートさせている。
tonun 「ライブでは、自分の曲を歌詞も見ずに歌えるぐらい聴き込んでくれているのが伝わってくるとやっぱり嬉しいですよね。本当にありがたいなって思います。特に弾き語りはオーディエンスとの距離が近いですから、一人一人の顔が見られますしその距離感を楽しみたい。お互いの感情をキャッチボールしやすいので、多くの方とコミュニケーションをとりたいですね。」
tonun
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(トヌン)
tonun
2020年10月に初作品となる『最後の恋のmagic』を配信。以後、毎月のように曲を配信し続け、3作のEP作品も完成させる。2022年には初ライブツアーを成功させると、翌年には待望のファーストアルバム『Intro』をリリース。各方面より大きな反響を得る。今年に入り、全7ヶ所でのワンマンライブツアー〈tonun Live Tour 2024『Intro』〉を敢行。以降も精力的にライブを開催し、現在は弾き語りツアー〈tonun 1st Acoustic One-man tour『Solo』〉の真っ最中。

日程やチケットなどの詳細ははこちら

https://tonun.jp/
Photography : Sotaro Goto
Model : tonun
Hair & Make-up : Storm
Casting : Masaru “runpe” Kato
Edit : Ryo Kikuchi
Web : Masaki Hori
Direction : Moe Ichiji