M's ファッション

コートの鍵は「モダン・ブリティッシュ」

2022/10/14
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大人っぽさ、凛々しさ、品の良さ。コートは、大人がスタイリングに求めるものを一着で表現できるアイテムといえる。中でも今季、ナノ・ユニバースが提案するのは英国が背景に透けて見えるもの。彼の地を匂わせるテイストと現代的ニュアンスを融合させた一着がきっと心強い相棒となる。

羊毛が英国において重要な素材であることは歴史が物語る。中世ヨーロッパで羊毛貿易の利権を巡り度々争いが起きたがその中心にいたのは英国。今、羊毛生産量世界一のオーストラリアへ羊を持ち込んだのも英国人だ。こちらでは、素材に英国羊毛を採用。染色性に乏しく弾力性がない“ケンピ毛”をあえて混成し独特な風合いと表情を演出している。漂う渋さは生成りニットやチェックパンツのいい引き締め役として機能。しかも、人類と羊毛の関係はそのケンピを保温用に履き物の中へ入れたのが始まりと聞くと、これまたグッとくる。

中綿をナイロン生地で覆いダイヤモンド型のステッチを施したキルティングコート。もともとはハンティング時に着用する乗馬用のコートとして開発されたともいわれる。1980年代にはファッションとして存在感を強め、’90年代に入るとイタリアの洒落者たちがスーツの上に羽織るスタイルが流行。こちらはそんな当時を思わせるような出で立ちだ。とはいえ、ベージュのセットアップや足元のスニーカーで抜け感を作ったことで古めかしさは微塵も感じない。

バブアーは、1894年創業の言わずと知れた英国を代表する王室御用達ブランド。港湾で働く労働者や漁師たちから火がつき、第二次対戦では英国軍へも納入した実績を誇る。それもありどこか無頼なイメージを抱きがちだが、なにもヘビーワーカーや兵士たちだけから愛されたわけではない。突出した機能性により、ロックミュージシャンたちからも支持を得ていた。ただこちらの別注は、黒を全身に纏った実にモードな佇まい。デニムとの相性も良さそうだ。

チェスターフィールドコートは19世紀、英国で一般服として着られていた膝丈のモーニングコートやイブニングドレスコートの上から羽織るものとしてお目見えした。それらが礼装に用いられるようになったことで、同コートもその場に見合うアウターとして認知される。とはいえこちらはウエストを絞らないボックス型で、スポルベリーノコートのように薄軽ゆえ動きやすさはひとしお。各所に落とし込んだクラシックディテールも威厳を後押しする。ソリッドな黒スタイルにはこの一着でシックさをプラスしたい。

グレンチェックは、正式にはグレナカート・チェックという。グレンとはもともと峡谷を意味する言葉で、14世紀頃にアーカート峡谷で生まれたことから“グレン+アーカート”=グレナカート、と呼ばれるようになった。だからか同柄にはどこか英国を感じさせる。ただ、こちらではカラフルなヘアラインストライプを施した。さらに、今季注目の鮮やかなニット、さらにはたっぷり目なボトムスとの相乗効果により、にわかに今っぽさが漂う。

英国を代表するブランド、インバーティア。その代表作こそダッフルコートだ。同国の名門、ジョシュア エリス社の生地を採用。世界に数台しかない織り機で作られた生地は織り目が美しく、肉厚ながらも軽量。そのうえ温もりも十分と実に隙がない。そんな英国きっての老舗へ今季は型からオーダー。着丈を長く設定し身幅にゆとりをもたせた。華やかな色合いも相まって、デニムオンデニムに見る往年のアメカジ的着こなしでも錆び付いた印象は皆無である。