M's Fashion

卓越した技術で優美な靴を作り出す
若林正裕さんの新プロジェクト。

2016/1/26
original
Brand Interview

 英国の紳士靴に用いられる装飾や、マッケイ製法、ブラックラピド製法といった手作業による繊細なディテールなど、卓越した技術で美しい靴を作り出してきた元TO&COデザイナーの若林正裕さん。今回は、日本のファッショニスタを初め多くのファンを持つ彼が現在携わる2つのブランド〈GENESIO COLLETTI & SON〉と〈bibliotek〉をご紹介。相反する2つの注目ブランド、その制作の裏側とは? 若林さんとデザイナーのジャコモさんにお話を伺ってきた。

若林さんは現在イタリアを拠点にデザインされているとお聞きしていますが、その経緯とは何でしょうか?

若林さん(以下W):「元々〈TO & CO.〉をやっていてその時にイタリアの工場で作っていたのですが、その工場が世代交代するタイミングで、私も経営者としてこの工場に入ることになりました。現在は、ここで2つのブランドを担当しているのと、日本でも数社の靴デザインをやっているので、イタリアと日本を行き来しています。ただ、イタリアのこの工場を今は拠点としています。」

〈GENESIO COLLETTI & SON〉とはどのようなブランドなのでしょうか?

W:「〈GENESIO COLLETTI & SON〉の、ジェネシオ・コレッティとは、ここにいるデザイナーのジャコモと、弟のパオロのお父さんの名前です。父と息子たちのブランド名で、こちらは伝統的なクラシックな靴作りを行っています 。私は監修として入っていて、デザインなども一緒にやっています。」

〈bibliotek〉は逆にモダンな雰囲気ですね。

W:「こっちは、未来的でモダンな靴をイメージしています。スイスグラフィックやロシアアバンギャルドが好きなので、そのエッセンスを入れたデザインを作っています。」

2人のイタリア人デザイナーさんと若林さん、制作過程における役割はどのようなものでしょうか?

ジャコモさん(以下J):「私と弟のパオロで、元々工場なので経営や運営のことを管理したり、デザインに携わったり。私の目標は一生靴職人であり続けることです。そのために、毎日の作業で少しでも技術を向上させ、成長していきたいです。」

W:「私は彼らの靴の制作過程に対して、日本式のものを取り入れています。例えばテーマをもってミーティングしたり、カレンダーを作ってスケジュールを組み立てていったり、これらは日本独特らしいんです。ジャコモは運営よりも職人側の気質ですね。私も工場ということでパターンなどやったりしています。」

ここの工場ならではの強みとは何でしょうか?

W:「他の工場は靴を作るプロセスで外注に出すところが多いのですが、ここは全部自社でやれるというのが強み。革の裁断なども手でやっていたり。そうすることでデザインや進行など全体を管理でき、細部にこだわることができます。」

j:「打ち合わせもエージェントに依存せずに自分たちでやっています。一足からでも靴を作る、というのがポリシーです。」

W:「お客様が会社であっても、ショップでも、個人的な方でも同じ目線で靴作りをやっています。」

個人でもオーダーメイドができるということでしょうか?

W:「はい。オーダーメイドというのは、いくつかのパターンの中で作っていくことが多いのですが、私たちはお客様の前で一からデザインしていきます。イタリア人だけでなく、日本の方も多いですし、北ヨーロッパやアメリカのお客さんもいます。」