
家を出てから、帰るまで。男性にとってトラウザーズとは、1日中脱ぐことのない衣服だ。ジャケットは脱ぐ。シャツは着替える。だがトラウザーズだけは、朝に選んだ1本がその日のすべてに付き合う。だからこそ、妥協なき1本を。だからこそ、1日中快適な1本を──
NANO逸品100 Vol.2で選んだのは、NEW ON TROUSERSだ。ナノ・ユニバースが26AWに向けて始動させた「Damerino World(ダメリーノワールド)」── 自由な発想と遊び心を忘れない大人、伊達男たちへ向けたジャケット愛好家のための世界観。その核を担う2本のトラウザーズである。クラシックな美意識と、現代において求められる機能性と快適性。その両立こそが、今このトラウザーズを選ぶ必然だ。
トラウザーズという衣服が持つ本来の品格
18世紀後半、フランス革命が起こり、貴族が愛用していたブリーチズ(半ズボン)に代わり、市民が穿いていたトラウザーズ(長ズボン)が流行した。それは単なるファッションの変化ではなかった。革命派は貴族の象徴であるブリーチズに代えて長ズボンを着用することで、前時代との隔絶を示そうとした。トラウザーズとは、階級を超えた男たちの意志の表明として生まれた衣服なのだ。
元々はフォーマルな服装にしか合わせることのできないパンツをトラウザーズと呼んでいたが、時代の流れとともに少しずつカジュアルな素材やフォルムのものが増えてきた。それでも「トラウザーズ」という言葉が持つ品格は決して変わらない。スラックス、パンツがスポーティな響きを与えるのに対して、トラウザーズにはドレッシーな感じすらある。その品格を纏いながら、1日中快適に過ごせること── それが現代の大人がトラウザーズに求める条件だ。
トラウザーズの前身頃にプリーツを入れる意匠は、ロシアのコサック兵が穿いていたボトムズが起源といわれる。19世紀前半にヨーロッパで流行した後、19世紀後半には機敏な動作を求められるスポーツウェアを中心に広まった。つまりタックとは、美意識だけでなく、動きやすさという機能性の産物でもある。クラシックなディテールには、必ず合理的な理由がある── そのことを、NEW ON TROUSERSは体現している。

クラボウという日本の誇り、サテンストレッチという答え
NEW ON TROUSERS 、2つの型に共通するのは、1888年(明治21年)、岡山・倉敷の地で創業し、130年以上の歴史を刻んできたクラボウ(倉敷紡績)のサテンストレッチ生地だ。日本を代表する紡績メーカーのひとつとして、テキスタイル産業を牽引してきたクラボウが、現代のトラウザーズに求められる課題に対して出した答えがこの生地である。
柔らかくストレッチが効き、1日中動いても疲れない。それでいてサテン特有の品格ある表面感を持ち、ドレスダウンにも対応できる。軽くてオールシーズン対応── これだけの性能を、1本のトラウザーズに詰め込むことは、クラボウの技術があってこそ可能になる。
ただし、2型が選んだ生地はそれぞれ異なる顔を持つ。「SLIM TAPERED」に採用されたグリストーン加工サテンストレッチは、天然穀物由来の原料を用いた特殊な染色・加工を施したもの。味のある表面感とヴィンテージのような風合いが、穿くほどに深まっていく。一方「2TUCK TAPERED」の高密度サテンストレッチは、さらりとした表面感と程よい光沢感が特徴で、穿き込むほどにアタリや色落ちという経年変化を楽しめる。同じクラボウのサテンストレッチでありながら、まるで別の個性を持つ2型── それが対比として並ぶところに、このコレクションの深みがある。




2型の対比── どちらを選ぶか
SLIM TAPERED
4つのカラーで展開するノータックのスリムテーパード。股上をやや浅めに設計し、すっきりとした腰まわりを実現しながら、裾に向かって自然に絞られるラインが脚のシルエットを美しく見せる。程よい生地の厚みとこしは、ジャケットを合わせたときにテーラードの重厚感と自然に溶け合う。ブラック、カーキ、ベージュ、ライトベージュの4色展開。1本できちっと見せたいとき、装いを引き締めたいときの答えがここにある。


2TUCK TAPERED
3つのカラーで展開する2タックのテーパードシルエット。プリーツはロシアのコサック兵のボトムズに起源を持ち、骨盤や股関節の周辺をゆったり膨らませることで動きやすさを生む意匠。フロントが浅めで後ろへ上がる股上の設計がホールド感を生み、2タックがウエストまわりの余裕を確保する。さらりとした高密度サテンの光沢感が、タックの陰影と相まって上品な存在感を放つ。ブラック、ダークブラウン、ベージュの3色展開。リラックスしながらも、決してだらしなくない── 視覚的にゆとりのある前姿と絞られた裾のバランスが大人の余裕を体現する。


2型に共通するのは、馬蹄をモチーフにしたオリジナルのDカンをフロントループに配置し、ヒップポケットのボタンには水牛調でヴィンテージライクな加工を施すという細部にまで隙のない姿勢の現れだ。また、SLIM TAPEREDのフロントには、ドレスダウンを可能にするためジーンズなどに用いられるタックボタンを採用。ポケット口には太めのタコ糸を2本忍ばせ、耐久性を高めながら、手を差し入れた瞬間の確かなホールド感を生み出している。そして、2TUCK TAPEREDのヒップポケットには、ミリタリーを想起させるフラップデザインを採用した。手に取って初めて気づくこうした仕掛けが、所有欲を静かに満たし続ける。





クラシックとは、懐かしいものではない。時を重ねても普遍的な価値を持ち続けるもの──それがクラシックの本質だ。トラウザーズというジャンルが数百年にわたって男性の装いの軸であり続けてきたのは、その普遍性ゆえである。NEW ON TROUSERSは、その系譜を受け継ぎながら、現代の大人が1日中快適に、そして自信を持って穿き続けられる1本として設計されている。
妥協なき素材。語れるディテール。穿くほどに深まる風合い──「Damerino World(ダメリーノワールド)」の中核を担うこの2本は、ジャケット愛好家たちの足元から、装いの格を静かに引き上げるもの。NANO逸品100 Vol.2に相応しい、選ぶ理由が明確な逸品だ。

ナノ・ユニバースが提案する、月刊連載コンテンツ。
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