アンティーク家具に囲まれ佇む彼女。食事シーンのため運び込まれた料理に満面の笑みを浮かべる彼女…。やはりその存在感はいつの時代も特別で、年齢は単なる“記号”であることをより実感させられる。そして、会話を重ねるほどに鮮明となっていくその存在感の理由。そこで脳裏に浮かんだのは、「流行は変化していくもの。だけどスタイルは永遠」というココ・シャネルの言葉だ。モデルとして、俳優として、独自の世界観を表現してきた彼女が考える“色気”。そのヒントになりうるワードを、言葉の節々から丁寧に拾い集めてみた。

Scene. 01

今は現実の自分とそうでない自分が共存している状態

若干13歳でモデルデビューを果たすことになる彼女。ただ、それは憧れよりも自身の直感に従った結果とはにかむ。今でもその決断に後悔はなく、「若いうちはどんどん挑戦した方がいい」と語る。彼女らしいのは当時の感覚を今なお内に秘めているという点かもしれない。

「大人としての成長を脱皮(変化)と捉える人もいるかもしれませんが、私はどちらかというと変わらないベースがあってそこへ肉付けしていくイメージ。基本、メンタリティはずっと17歳ぐらいなんですよ(笑)。それは言い方を変えれば、すでにその年齢で確固たる世界観や価値観が作られたということなんだと思います。いろんな世界を見せてくれた人、導いてくれた人に感謝ですね」

それはファッションにおいても当てはまるかもしれない。今回袖を通したアイテムやコーディネートへ話を向けると、そこにあったのは可憐な少女の顔だった。

「どこか生活にファンタジーが欲しいと思っていて。そのファンタジーを実現可能にするのがファッションなんですよね。どこからイメージやアイデアが湧いてくるかというと、見た映画や写真集に小説。たとえば、映画に出てきた女の子がしていたマニキュアが可愛かったら、私はそれに合わせて服を選んでみようと考えます。普通に生活していると、淡々と時間だけが過ぎていきますよね。だから、そこにちょっと非現実的な要素を加えることで日常を彩りたいと思うんです」

Scene. 02

彼女の好きが散りばめられた3スタイル

3ルックの中でも今の気分にもっとも近く、自身の日常にリンクしそうと話したコーディネートがジーンズを合わせた着こなし。

「昔からよくデニムを穿くんですよ。それに、自分の中ではトップス一着でバーンと合わせるのが理想ではありますが、どうしても不安でついレイヤードしてしまいがち。そういった部分も共感しちゃいます(笑)」

「昔からよくデニムを穿くんですよ。それに、自分の中ではトップス一着でバーンと合わせるのが理想ではありますが、どうしても不安でついレイヤードしてしまいがち。そういった部分も共感しちゃいます(笑)」

とはいえ、「他のアイテムやスタイリングも素敵でした」と表情をいっそう和らげる。その一言、一言から、洋服への愛情や高揚が伝わってくるようだ。

「クロシェのワンピースもレザーブーツも素敵でしたね。ベースに甘さがありながらそこへハードさを添えるアプローチは私が今すごく好きなスタイル。アンサンブルの着こなしもプライベートで取り入れてみたいと思いました。色で一番好きなのはパープルなので、こちらのワンピースの色味にも惹かれてしまいましたね。それぞれに私の今の気分が詰まっている感じがします」

洋服へ向けられる愛情はやはり、数え切れないほどのアイテムに袖を通してきたがゆえ。その瞬間、瞬間の感動を積み重ね彼女のスタイルは練り上げられてきたのだろう。その工程を独特な言い回しで表現する。

「スタイルって長い時間をかけて構築していくもの。少なくとも自分はそうです。削ぎ落としてはプラスして、あるいは戻してを繰り返す。でも明確な完成型はない。サグラダファミリアじゃないですけど、ひとつの建築物を作っているような感覚に近いんです」

Scene. 03

自分の気持ちに正直な人は総じて、美しく、健やかで、艶やかに見える

ファッションも含め、好きなもの、影響を受けるものはわりと変わらないかもしれないと微笑む彼女。とはいえ、今は相応の変化も感じ始めている。

「若い頃は、可能性がたくさんある中で自分の能力や精神が追いつかず落ち込んだこともありました。だけど、今は自分の人生を楽しもうって純粋に思います。仕事も大事ですけど、気持ちよく行うには自分の生活を心地よくすることが大事だと思いますから」

分かりやすい例が食事。今回ロケーションとして彼女が選んだのは、「昔から気になっていた」という『調理室池田』。川崎市中央市場内にあり、場内で働く人に加え遠方から足を運ぶ人も多い知る人ぞ知る名店だ。市場で仕入れたばかりの食材で作るサンドイッチやランチは好評で、スイーツもSNSを賑わせている。用意された撮影用の料理に目線を落としながら、彼女は軽やかに会話を続ける。

「食は歳を重ねるほど重要だと感じます。一緒にいて落ち着く人と過ごす時間は心の健康という意味でもすごく大きい。それに、もとより外食する方ではありませんでしたが、今はその機会も増え、そこで自分の知らなかったお酒とご飯のペアリングを発見したり、初めて食べる料理に感動したりするのも新鮮ですね」

これまでの話を通して感じられるのは、尽きることのない好奇心。心境の変化も感じているとはいえ、彼女の内にはやはり17歳の頃の感覚が今もなお根付いているのだ。

「色気について考えていた時にふと思い浮かんだペルソナが、好奇心を常に持ち続けている大人。フラットな目線で面白いと感じたら、すぐに自ら飛び込める人は素敵だと思います。ある程度経験を重ねてくると億劫になりがちですよね。しかも、知らないことを素直に受け入れるのは下手したら恥ずかしい想いをする場合もある。でもそれを一旦取り払えれば、きっと心は豊かになると私は信じています」

北部市場関連組合
川崎市中央卸売市場北部市場
https://ichibadeokaimono.jp/

調理室池田
https://www.instagram.com/ikeprox/

太田 莉菜

千葉県出身。2001年に雑誌「ニコラ」のモデルオーディションでグランプリを獲得。その後、数多くのファッション誌で活躍し、表紙も飾るなど業界の第一線で声果を高めていく。2004年には映画『69 sixty nine』で俳優デビュー。以降も『来世ではちゃんとします』『おいハンサム!!』『西園寺さんは家事をしない』など数多くのドラマや映画に出演。俳優としてもモデルとしてもその影響力は計り知れない。

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